【ネタバレ】言の葉の庭


盛大にネタバレしています。これから見る人は読まないでください。
見る予定のない人は見に行ってください。つまり誰も見るなってことか(笑)

とりあえず自分のメモとして書きます。

45分という短編アニメーションですが、ものすごく濃密な、そして純粋なラブストーリーです。これは見ないと損です。大絶賛です。短編なので1000円です。(併映の超短編ありですが、それでも全部で1時間ないです)

15歳の頃に持っていたもの、27歳の頃に持っていたもの。

それらを考えされられました。

技術的には、とにかく雨の描写がすごい。これ、アニメなのかと思うほど。
メインのシーンである新宿御苑や渋谷、新宿、原宿は写真をそのまま描いたと思うほど。

併映の「だれかのまなざし」は野村不動産とのコラボで作られたもので、これまで野村不動産のイベントでのみ上映されていたもの。この映像については別の日記にて。こちらも泣けます。

15歳、高校一年生のタカオは靴職人に憧れており、我流で靴型を作り、靴を作っている。履いている靴は自作だ。。彼は空の匂いを運んできてくれる雨が好きで、雨の朝の午前は学校をさぼって、新宿御苑の東屋で靴のスケッチをすることにしていた。

六月。
雨の朝。
いつもの東屋にいると年上の女性がいた。午前中なのにチョコレートをつまみに缶ビールを飲んでいる。どこかで会ったような気もするが、聞いてみると「いいえ」。
そして、去り際に和歌のようなものをくちずさんで去っていく。

タカオは母親と兄の3人暮らし。両親は離婚しているが、若く見える母は年下の彼氏のもとに走っている。サラリーマンの兄も婚約者と同居するために家を出る予定。
家事全般はタカオがやっていた。

梅雨に入り、雨の朝。またまた学校をさぼっていつもの場所にいくとあの女性がいた。
約束したわけではないけれど、二人は雨の午前中にその場所で会うようになった。

やがて、二人は親しく会話するようになり、タカオが靴職人を目指していることも語った。

その女性……ユキノは仕事でトラブルを抱えていたらしく、毎朝、身支度をして家を出るが原宿駅で電車に乗れない。ストレスからか味覚障害があり、アルコールとチョコレートぐらいしか味がわからなくなっていた。

自宅で電話で話している男性は、ベランダで煙草を吸いながら。カーテンの向こう側には掃除機をかける人影。不倫の匂い。
ユキノは「仕事を辞めようと思う。別れたあとでも面倒をかけて申し訳ない」という。職場を辞め、不倫も清算。しかし、電話の雰囲気から不倫が原因での退職ではないようだ。

七月。
雨の朝が続き、二人の、「約束のない逢瀬」が続く。
タカオは名前も年齢も知らないその女性にたまらなく惹かれていた。彼女はまるで「世界の秘密のすべて」のようだった。
ユキノはタカオに「SHOEMAKER」という高価な洋書をプレゼントし、タカオは彼女のための靴を作ろうと思い、足のサイズを測ったり足の形をトレースした。

しかし、梅雨が明けて、晴れの日が続き会えなくなった。

八月。
夏休みに入り、タカオはバイトの日々。イギリスにある靴職人の専門学校へ進学するお金をためている。それに、今でも木型を作り、革を買って自分で靴を作っているのだ。

九月。
学校が始まる。
そして、職員室の前を通りがかったときに。
二人は出会ってしまった。

ユキノはタカオが通う高校の教師だったのだ。

どうしてユキノのことをタカオは知らなかったのか。
友人の彼女で事情通の佐藤がいうには、「3年の古文の担当だった雪野先生のことを好きになった男がいて、それをやっかんだ恋人の女子生徒が周りをたきつけて、あることないこと言いふらし始めた。あまりにもひどくて警察に言うべきだ、と進言もしたけれど面倒事を嫌う高校は動かなかった」。

それを聞いたタカオは3年の教室で、物事の元凶である相沢を殴り、取り巻きの男子と取っ組み合いのけんかとなる。

翌日。雨は降っていなかったけれど、いつもの場所へ。そこからすぐ近くの池のほとりにユキノがいた。顔に絆創膏のタカオ。どうしたのと問われて「あなたのマネしてビール飲んで酔っ払って、山手線の線路に落ちました……嘘です………喧嘩くらい、しますよ」

タカオが詠む。

雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて 降らずとも われは留どらむ 妹し留どめば

万葉集の恋の歌。

初めて会ったときにユキノが口ずさんだ歌は

雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ

(雷が鳴り雲が広がり、雨が降ってくれれば、あなたをここにいさせることができるのに)

それに対してタカオが詠んだ返歌は、

雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて 降らずとも われは留どらむ 妹し留どめば

(雷が鳴って、雨が降らなくても、私はここにいます あなたが引き止めるのなら)

「教科書に載っていました」とタカオ。
「古文の教師と気づいてくれるかもと思って言ったのよ」とユキノ。

やがて雨が降り始め、それはゲリラ豪雨というべきほどになり、東屋に避難した二人に容赦なく降り注ぐ。

二人はユキノのマンションへ。ユキノはタカオの制服にアイロンをかけ、タカオはオムライスを作る。二人で食べたあとコーヒーを飲みながら、二人は心の中で「今まで生きてきたなかで、一番幸せかも」と思う。

そして、タカオは言う「僕はユキノさんが好きなんだと思います」。
頬を染めるユキノ。でも、我に返って「『ユキノさん』じゃないでしょ、『ユキノ先生』でしょ」とたしなめる。
そして、来週、ここを引き払い四国の実家に戻るということも告げる。

タカオは急に半乾きの制服に着替えて礼を言い部屋を出る。

たしなめたけれど、ユキノはこの3か月のタカオとのことを思い出す。自分の「歩き方」を助けてくれていたタカオのことを思い、部屋を飛びだして追いかける。

マンションの非常階段を転がりながら下りていくと、途中の踊場にたたずむタカオがいた。

タカオがいう
「思えば、最初に会ったときからあなたは嫌な人でした」。
「朝から酒を飲み」
「制服で自分の学校だとわかっていたんでしょう」

それは、非難の形をした愛の告白。

「靴職人にだなんてなれるわけないと思っていたんでしょう」
「人のことばかり聞いて自分のことは話さない」

心を開き、ユキノの瞳からこぼれ出す涙。

「あなたはそうやって自分のことは決して話さないで、自分一人で生きていくんだ!!」

その瞬間、駆け寄りタカオに抱き着くユキノ。
「私はあなたに助けられていた」と。

それは愛の告白。
固く抱き合う二人。エンディングテーマの「Rain」が流れる。

雪の新宿御苑。ユキノのからの手紙を読むタカオ。
完成した靴。

四国で教壇に立っているユキノ。

「自分がもう少し大人になったら会いに行こう」

(Fin)
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どうやったら、こんなお話を作れるんだろう。