キャンディ・キャンディはなぜ「死んだ」のか。


現在40代後半から50代の方が懐かしく思う漫画はたくさんあると思う。忘れたと思っていたころに続編やDVD/BDによる再発、再放送、パチンコ台への使用など、新しいビジネスが起こるとそれに使われるからだ。

しかし、その中で封印されてしまったビッグネームがある。

「キャンディ・キャンディ」だ。女の子たちの間では爆発的人気のあった漫画で、「なかよし」に連載されていた。小学生のころ、妹が毎月読んでいたので、リアルタイムで私も読んでいたしアニメも毎週見ていた。

しかし、ここ20年、まったく見かけない。
それはある裁判によって封印されてしまったからだ。

「キャンディ・キャンディ」はストーリーを作った水木さんと、作画を担当したいがらしゆみこによる作品で、その取り分は水木4:いがらし6だったとされる。
ところが、この配分に不満を持ったいがらしが、水木に無断で、自身の作画した絵を元に不法なビジネスを始めた。プリクラ機への許諾や香港の出版社による中国語版の発売などである。これらは水木氏にまったく連絡なく行われたもので、裁判となる。
するといがらし氏は驚いたことに、「水木氏に著作権は存在しない」という主張を繰り広げる(後に最高裁判決確定後、それは当時の弁護士に『80取りたいなら100もらう主張しないとダメだ』と言われたという言い訳をしている)
最高裁は一次著作権に水木氏、そこから派生する二次著作権はいがらし氏が持つ、と認定した。ということは、いがらし氏の描いた「キャンディ・キャンディ」は水木氏の許諾がないと出版できないということになる。そこから派生したアニメも同様だ。
逆に、いがらし氏の挿絵を除いた小説などだったら、いがらし氏の許諾なく、水木氏は出版できることになる。
ところが、いがらし氏は採算にわたった自らの不法ビジネスについて謝罪することなく、開き直るばかりであり、裁判が確定したあとも倉敷にある「いがらしゆみこ美術館」にキャンディ・キャンディの原画であると明示して五年間も展示を続けた。(この美術館はいがらし氏が運営主体になっているわけではないが、名誉館長としてホームページにも登場している。展示は水木氏の差し止め提訴により、撤去することで和解。実質上の水木氏の全面的勝訴)
よって、水木氏が「キャンディ・キャンディ」のコミックやアニメについていがらし氏に許諾を与えるのは絶対にありえない状況になった。ゆえに、このビックネームは封印されたのである。

なぜ、いがらしゆみこは謝らないのだろうか。
法を犯したのは自分なのに。
一緒に作り上げた作品なのに、原作者に「著作権は存在しない」などと摩訶不思議な主張を繰り広げたあげく、自らのキャリアの中で最も有名なタイトルを使えないようにしてしまった。
欲に事欠いて、目の前の小金欲しさにこそこそと黒いビジネスをしたおかげで、その後の大きなビジネスチャンスを吹き飛ばしてしまったのだ。