台風の目の想い出。
小学生のころ、大阪に台風が直撃した。
不謹慎ながら、子供というのは台風が来ると聞くとワクワクするものである。
風雨が強くなり、本当に大阪に向かってまっすぐにやってくる。
いまと違ってリアルタイム情報はテレビかラジオしかない。
テレビはずっとNHKで、各地の被害の様子を放送していた。
あるタイミングで風がはたと止まった。
静かだ。
進路予想図からすると、台風の目が大阪に来ている時間だ。
もしかしたらと思って2階のベランダへ向かって空を仰ぐ。
そこには信じられない光景が広がっていた。
南向きのベランダに立つと、左側と右側(東西方向)に巨大な雲の壁が見えていた。
そして、自分が立つ上空はぽっかりと晴天域が広がり、月や星が光っているのが見えた。
月明りで雲の壁が照らされ、その壁は絶えず渦を巻いていた。
間違いなく台風の目の中だ。
知識では知っていたが初めて見る光景だった。