帰りの電車にて。

火曜も雨。仕事多忙。

帰りの電車に乗って、座席の前に立ちました。
目の前に座っている男性は疲れ果てているのか、膝の上にトランクを置き、その上にうずくまって寝ていました。

ただ、その両サイドに結構なスペースがあり、どちらかに寄るともう一人座れそうです。しかし、こういう場合は本人の自覚に任せて、「寄ってくれ」とは言わないほうが多いです。私も寝てるからあえて起こしてまでと思っていました。
ところが、そのあとに乗ってきて私の背後に立った欧米系外国人が、

「スミマセン、彼がスライドしたらもう一人、座れますね?」と言い出しました。
とっさのことで何と返事しようかと考えていたら、いきなり目の前の男性がむくりと起きだしてこっちを見ます。
会話が聞こえて起きたのかな?と思っていたら、外国人は先ほどと同じことを彼に言いだします。ちなみにけっこう恰幅のいいイカツイ系。

そしたら、彼が「そんなことより何けっとんねん、アホボケ!」と怒りだしました。

蹴った?

そしたら、外国人が「そうしたらどうやって起こしますか?」

あんた、足蹴ったんか(苦笑)

「声掛けたらええやんけ、ボケ!」と言いつつも、横に寄り、周りの冷ややかな空気も気付いたのかまた寝てしまいました。寝たふりかもしれません。

そして、外国人は私に「さあ、どうぞ」

え、俺?

確かに外国人が座るには少し狭いし、トラブった相手の横に座りづらいでしょう。
私は好意に甘えて座ることにしましたが、とくにコメントはしませんでした。
アホボケ兄ちゃんに絡まれると面倒だと思ったからです。

しばらくして、私の右側の人が降りました。その前に立っていたおじさんは座らなかったので、その外国人が座ることになりました。

それまでは自分のことをアホボケと罵ったおっちゃんの前に堂々と立っていたのです。
ビビらなかったのは日本語の罵倒があまり分からなかったこともあるでしょうが、彼が欧米系のわりとイケメンの白人であること、彼も恰幅がよく背が2メートル近くあったことです。かなり威圧感がありました。

つまり私は、アホボケと外国人の間に挟まれて家路に……。
微妙な緊張感。降りるときに一言、礼を言おうと思っていたのですが、私が降りる駅で外国人も降りてささっと階段を下っていってしまいました。

という話を帰宅してから奥さんに言ったら「かっこいいー、紹介してほしいー」

アホか。