Rain

最近、秦基博がカバーしたバージョンの「Rain」がよく流れていて、心をちくちくさせる。

元は大江千里の1988年のアルバム「1234」(ワンツースリーフォーと読む)に収録されていたのだが、シングルカットされたわけではなく、またタイアップに使われたわけでもないので、長い間、千里ファンの間だけで知名度が高かった、いわゆる「隠れ名曲」だった。

もちろん、私も当時から知っており学生時代の恋愛沙汰とも相まって、心がちくちくしたり、じくじくしたりする気持ちのBGMとして愛聴していた。

この曲が日の目を見たのは10年後。1998年、槇原敬之のカバーアルバム「Listen to the music」にてカバーされたため。残念ながら、すでに当時は槇原のほうが大衆的な人気が上であったため、一気にこの曲が広まった。槇原は大江千里に多大な影響を受けており、この隠れ名曲を起用するあたりもマニア心をくすぐるというか。

そして、今年、新海誠監督による短編アニメーション「言の葉の庭」のエンディング主題歌として秦が起用されることとなった。当初、槇原バージョンを聞いた新海監督は槇原にオファーしたが、日程の都合がつかず、テレビ番組で共演していた秦の声を聞いて、秦にオファーしたところ快諾されたという。

この「Rain」、歌詞を読むと一貫したストーリーがない(ような気がする)
というか、意味の取りずらい部分が多々ある。
それでも心に刺さるのは、心象風景がパッチワークのように組み合わさり、たたみかけるように心に押し寄せてくる結果ではないかと思う。

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言葉にできず凍えたままで
人前では優しく生きていた
しわよせで こんなふうに雑に
雨の夜にきみを抱きしめてた

道路わきのビラと壊れた常夜灯
街角ではそう 誰もが急いでた
きみじゃない悪いのは自分の激しさを
隠せないぼくのほうさ

Lady きみは雨にけむる
すいた駅を少し走った

どしゃぶりでもかまわないと
ずぶぬれでもかまわないと
しぶきあげるきみが消えてく
路地裏では朝が早いから
今のうちにきみをつかまえ
行かないで 行かないで
そう言うよ

別々に暮らす 泣き出しそうな空を
にぎりしめる強さは今はもうない
変わらずいる心のすみだけで傷つくような
きみならもういらない

Lady きみは雨にぬれて
ぼくの眼を少し見ていた

どしゃぶりでもかまわないと
ずぶぬれでもかまわないと
口笛吹くぼくがついてく
ずいぶんきみを知りすぎたのに
初めて争った夜のように
行かないで 行かないで
そう言うよ

肩が乾いたシャツ改札を出る頃
きみの町じゃもう雨は小降りになる
今日だけが明日に続いてる
こんなふうに きみとは終われない

Lady きみは今もこうして
小さめの傘もささずに

どしゃぶりでもかまわないと
ずぶぬれでもかまわないと
しぶきあげるきみが消えてく
路地裏では朝が早いから
今のうちにきみをつかまえ
行かないで 行かないで
そう言うよ

どしゃぶりでもかまわないと
ずぶぬれでもかまわないと
口笛ふくぼくがついてく
ずいぶんきみを知りすぎたのに
初めて争った夜のように
行かないで 行かないで
そう言うよ


宇宙戦艦ヤマト2199第9話

今回は旧作にはないリメイク版のオリジナルエピソードです。
エンケラドゥスで捕獲したガミラス兵は、オートマタ=AIを備えた自動人形だということがわかりました。
修復可能な1体を再起動して、ガミラスの情報を聞き出す作業をするアナライザー。
修復された自動人形を「オルタ」と名付けて教育していまアナライザー。
オルタはどんどん自己認識を深め、「自分は何者であるのか」と考えるようになり、ヤマトのネットワークに侵入するようになります。

偵察機の収容作業のサポートにあたっていたアナライザーは、ヤマトのネットワーク内で「オルタ」の存在に気づき、そのために偵察機の収容作業で事故が起りかけます。

真田は「オルタ」との接触がアナライザーに影響を与えているのなら初期化する可能性もあるとアナライザーに告げ、オルタとの接触を禁止しました。

しかし、オルタは自分が何者であるのか、そして艦内ネットワークの中で出会った「女神」を探すために脱走。

保安部が出動し「オルタ」を追い詰めますが、真田とアナライザーは武器を納めるよう要請。「オルタ」は自分が孤立していると認識した状況が続いた場合、自爆するプログラムが走っていることがわかったからです。

保安部長の伊東は「ただの機械だろう」と言い放ちますが、真田に「君に心があるのかどうかさえ分からない」「ただ人間らしく振舞っているだけなのかもしれない」などと言われる始末。

オルタは甲板上に出ます。そこにはアナライザーが待ち構えていました。
オルタに接続したアナライザーはオルタを初期化しカーネルを破壊、再起動を不能にしてメインメモリのみを抜き取りました。

あとで解析したところ「自爆プログラム」は起動していなかったことが判明。すなわち、ヤマトに少なくとも一人は自分の味方がいる、と認識していたことになるということがわかったお話が終わります。

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この回は多層構造になっています。
まず、艦内ラジオがベースとなり、そこにリクエストされた21世紀末の名作小説が紹介されます。その話はロボットが他のロボットと接触することによって、自己認識を得るという話になっており、本編のオルタとアナライザーの関係に重ねられています。

旧作にはなかった「情報ネットワーク」の描写は攻殻機動隊のそれに似ています。
ロボットの自己認識についての話の部分はブレードランナーの影響もあるでしょう。

また、今回「オルタ」が女神がいると思っていた部分は旧作の設定にはなかった「自動航行装置」。ヤマトの前甲板に設定されています(テレビ版ヤマトIIIでハイドロコスモジェン砲が設置されていたところ)。
イスカンダルへの航路情報があるという、もっとも重要な部分であり、クルーからは「開かずの間」と呼ばれていましたが、ヤマトラジオのDJを務め、霊媒体質を持つと自分で言っていた岬は、その「開かずの間」の真下で「何か」を感じるようになります。
これは、このあと後半のヤマト艦内の事件について重大な伏線となっています。

これまでほとんど登場していなかった保安部の伊東がクローズアップされ、その性格や思想の一旦が明らかにされることで将来の火種が想起されます。